紙バンドの仕事は紙の仕事と考え、紙バンド=紙製品と捉えて兎屋をやっています。そこには、日本における2大紙産地である愛媛県宇摩地区と静岡県富士地区の両地区と兎屋との因縁があります。

愛媛県宇摩地区とは旧伊予三島市・旧川之江市・旧土居町・旧新宮村を指し、2004年これら2市1町1村が合併し四国中央市となっています。この合併の為「宇摩郡」という由緒ある名前は消滅しました。この地区は降雨量の少ない瀬戸内海気候の為、長年水不足に悩まされて来ましたが、製紙業を中心とした地域経済界の有志達の尽力でダムとトンネルを建設し、工業用水として活用しています。

静岡県富士市地区は富士市と富士宮市を指しています。いわゆる「富士郡」です。こちらも製紙や紙に関わる会社が多いのが特徴で、富士山地下水や富士川工業用水を利用しています。また富士地区は東西大消費地に近く愛媛県紙産地に比べ産業的に活発な時代がありました。その為、中小と言っても製紙マシンは大き目です。

兎屋店主の社会人スタートが愛媛県伊予三島市本社(現:四国中央市)の紙代理店だった関係で、伊予三島市や川之江市との関係が強くなったのです。その後、東京支店時代に知り合った方の導きで、これまた縁もゆかりも無い静岡県富士宮市の製紙会社に転職した影響で、富士地区の方達とのご縁が出来たという事です。いろんな不思議が重なっています。そして、富士市で手芸用紙バンドの事を知り、「いろいろあって」兎屋をやっています。

えらく前置きが長くなりましたが、この愛媛県と静岡県が、実は手芸用紙バンドの紙流通に大きく関係しているのです。

皆さんが使われている手芸用紙バンドは大きく分けて①クラフト紙バンドと、②カラー紙バンドの2つです。この①②と原紙との関係がおもしろいのです。(おもしろいと感じるのは私だけかも知れませんけど)簡単に書くと・・・・・・・

①クラフト紙バンド=原紙:静岡県
②カラー紙バンド=原紙:愛媛県・高知県です。


最近はあまり言わなくなりましたが、以前は紙バンド手芸の事を「・・・紙バンドは100%再生紙で作られ、環境にもやさしいのです・・・」のアノお題目の元は、静岡県産のクラフト紙にあり、その製紙会社ではクラフト紙を抄造する時に上質なクラフト古紙を使っていました。今でもその体制は変わらないと思いますが、いつも原料が100%古紙かどうか、私は分りませんし、そんな事は製紙会社ではあまり重要な事ではなくむしろ日常です。

上質クラフト古紙を集めるのは難事で、景気が悪く、産業構造がどんどん変化している現代は古紙の集まりが低調で、品質は低めになります。因みに兎屋紙バンドの「くらふと/愛媛県産」と「クラフト/静岡県産」はどちらも静岡県のクラフト紙を使用しています。ロットによって色目が変わる理由は原料古紙率と品質のばらつきで、その変動理由もこれで説明が付きます。

一方、カラー原紙は、ごく一部の例外以外を除いて、ほとんど愛媛県四国中央市の製紙会社2社で生産されていて原料は100%パルプです。尚、兎屋のコレクションカラー紙バンドは特別に高知県産の原紙を使っています。

原料に古紙を入れる事も可能ですが、消費地から遠い愛媛県の製紙会社は、良質で均一な古紙が集まりにくく、特に中小製紙会社は、入手や扱いが困難な古紙よりもパルプによる抄紙を選んで来たのです。

パルプ原料で抄かれた紙は古紙原料の紙より価格が高くなりますが、それも含めライバルの静岡県紙産地に対して常に後塵を拝し続けていた事がバネになり、今の四国中央市の紙産地を保っていると私は見ています。残念ながら静岡県富士市ではカラー原紙を抄く会社は2000年ごろに消滅しています。

※2018年半ばから薄い色だけ静岡県のある製紙会社が自社用に抄き始めたと聞いています。

カラー紙バンドを作る為に使用するカラー原紙の場合、そのカラー(色)の元はほとんど「染料」です。もちろん「顔料」でパルプを染めてカラー原紙を作る事も出来ますが、一般的に「顔料」は高額なので、紙パルプの世界では染色を使う事が多いのです。

染料にも高価~安価があり、少年漫画雑誌の本文色更紙に使う染料は、一週間から一か月の間、色が保たれて居ればいいので安価な染料を使います。その為、漫画雑誌用の色更紙は陽に照らすとあっという間に色が抜けます。しかし手芸用紙バンドではそんなに早く色褪せされては困るので、褪色の少ない染料を使うようにしています。

さて、意外な事に「くろ」に染料はありません。他の色なら染料と顔料とがありますが ※1「くろ」に染料は無いので、紙バンドの世界でも「クロ」は顔料で染められているという事です。その為、紙の世界では「くろ」の紙は値段が高く設定されるのが一般的です。

※1 染料と顔料があると言っても染料は人工的に作られたものであり、顔料は自然のものですので全く同じ色ではありません。

この「くろ」ですが、紙よって色が違います。材料の顔料はほぼ同じ製品が流通しているはずですが、染められた紙によって色が違い、一般的には青味の掛かった「クロ」となっています。この事は兎屋を始めて数年して気が付きました。

そこで製紙メーカーさんに「もっと真っ黒なクロが欲しいけど」とお願いしましたが、「現行の顔料ではこの色しか出ないのです」と言われたのです。そこで考えたのが、以前兎屋で販売していた「すみ K‐1699」でした。染料を工夫して墨のような色を再現していました。

兎屋コレクションカラーの「くろ K‐1513」と、静岡県産のカラー紙バンドの「クロ 03」を比較すると「くろ K‐1513」に比べ、「クロ 03」の方が青味?ムラサキ色?がかっています。たぶんこの系統の「クロ」が一般的なのだと思います。じゃあ、なぜ同じような顔料を使っているのに「くろ K‐1513」がより黒なのか!・・・・?

ここがミソなんですよ(爆笑)

2015年秋に切り替わる4番目の新ロット色は「まっちゃ」です。これでこの秋の新ロットは終り。こちらの「まっちゃ」も兎屋紙バンド定番色として長く愛されている色です。番号はK‐1611・・・・という事は平成16年に愛媛県の今は無き製紙会社さんに作って貰った色です。

製紙会社のあったところは、現在は住宅地になっています。製紙会社があったなんて分らなくなっています・・・・時代です。

兎屋オリジナルカラーとして一番若い番号は「赤ぶどう K‐1401」で、最初ロットの5色は「K-1502 かふぇおれ」までです。「あい K‐1405」「くろ K‐1513」など前後している番号もありますが、それらは資金的な理由で、色は作ったけれど紙バンドとしては後回しになったという事です。

兎屋オリジナルカラーと言っても、当初はたった5色でスタートし、その後「うすあお」「うすみどり」「うすもも」なども紙バンドにしていました。しかし兎屋らしい変わった色も作っていて、「おりーぶ K‐1508」「ねず茶 K‐1512」の2色がそうです。


ところが平成16年、兎屋として一般的な?色?も作らなくてはならない状況となり、20色ほど一気に作ったのがK‐16○○と+「K‐1700 しろ」でした。そのなかに「まっちゃ K‐1611」がありました。「まっちゃ」といっしょに良く買って頂ける色として「あずき K‐1607」があり、カゴ・バッグ作りにはちょうど良い色となっています。


まっちゃ色は色ブレの少ない色で、過去何度も作って来ましたが、抄紙ロット毎の色違いがあまりない安定した色です。試しに「抹茶色」で画像検索をしたら、様々な「抹茶色」が出て来ました。兎屋紙バンドの「まっちゃ」は安定した色なのに、世間的にはたくさんの?「抹茶色」があるという事でした。

2015年秋に切り替わる3番目の新ロット色は、「ちょこ」です。兎屋紙バンドの定番色として、兎屋創業の翌年2004年夏から製造・販売をしている古参色です。つまり、兎屋オリジナル色として最初に作った5色(赤ぶどう・ちょこ・きゃらめる・めいぷる・かふぇおれ)の一つです。

このスタート5色は、兎屋独立時に母からの応援資金で融通して貰った100万円をやりくりし、本来なら100万円では2色しか出来ないところを、極小ロットで無理やり乗り切り5色作ったのです。なので、この5色の選定には相当悩んだハズですが、実はすんなり決めていました。


今回のちょこは品質的にも色的にも思った通りに出来ました。


弾力があり、すこし固いけれど編み易いですよ。

まだ紙バンド手芸が海のものとも山のものともつかない2000年前後の頃、手芸用として作られていた紙バンドのカラーは、黒、赤、黄色、青、オレンジ、みどり、ムラサキ、と言ったものしかなく、紙バンド手芸はこれからだっ!と思った私は、だからこそ中間色をたくさん作らないとお客さんは飽きる!と危機感を覚えました。

その為、日本人に受ける色をと思った時にこの5色が浮かんだのです。もちろん「ちょこ」は、はずしてはならない色でした。そして「ちょこ」色を作る時の絶対条件とは・・・・・チョコレートの色・・・・にする!でした。まぁ当たり前ですけどね。でもこれが難しい・・・・この「ちょこ」色は何度も作って来ましたが、実はすべて色が違っています。ビターになったりミルキーになったり・・・・・チョコの色ってかなり多いですしね。


K-1403 14・・・・平成14年から準備していた色でした。


紙を買ったら早く製品にして販売しないと・・・・請求書は待ってくれないのでした(笑)

兎屋の場合は特に小ロットで原紙生産をするので、色が落ち着くことはまずアリマセン。無理です。でも、このロットごとに色が多少違う事はお客さんには了解して貰う事にし、その代り!材料としての性能には気を使っていこう!と2005年頃に思ったのでした。「ちょこ」は難しい色です。

1か月前のブログ(兎屋書庫)で書いた「♯10 27回目の挑戦」の通り、兎屋で販売しているコレクションカラー紙バンド「紅さつま」「ぶどう」が新ロットとなりました。この秋に新ロットとして切り替わるのは、4色で、あと「ちょこ」と「まっちゃ」が控えています。

今回の新ロットから紙を少し変えて見ました。兎屋でオリジナル紙バンドを作り始めて13年、原紙については過去何回も大きな変更を繰り返して来ましたが、今回は中程度の変更です。大きな変更の中には・・・製紙会社が無くなった!・・・と言うのもありました。


コレクションカラーとしては新参者の部類に入る紅さつま色とぶどう色です。


しっかりしたハリとツヤが兎屋紙バンドの特徴です。作品の出来が違いますよ。

今回特に気にしたのは、どうしたらもっと糸がしなやかになるだろう・・・・????です。しなやかな糸ってなんだろう?しなやかと柔らかいは違う?それが紙バンドにどう影響を与えるのか?残念ながらわかりません。でも何かやらないと変化が見えないし、紙バンドにして見てもアマリカワリナイ・・・かも知れない、と思いながら紙のデータをいじってみたのです。データ的には中ぐらいの変化ですが、あまり見た目は変わって無いような・・・キガスルゾ

後は小巻加工で感触を確かめたり、お客さん達の感想をお聞きしたりの繰り返しです。毎度の事ですけど。これ大事

製紙会社の営業マンだったある日、お客さんの事務所で初めて見た手芸用のカラー紙バンド。今でもその時の状況は覚えていますし、見た瞬間(これは面白い仕事!)(この仕事に関わりたい!)と思ったのでした。

その後製紙会社を辞め、2002年春に神奈川県藤沢市で「兎屋」をスタートしました。スタートした頃「兎屋」で販売するクラフト紙バンドとカラー紙バンドは静岡県のものでしたが、並行して「赤ぶどう」「ちょこ」「きゃらめる」などのこだわり中間色の紙バンドを作り販売しました。当時は中間色の和色のような紙バンドはありませんでした。

こだわり(ややこしい)のカラーの紙バンド原紙は愛媛県の製紙会社で作って貰いました。条件は小ロット抄造が可能かどうか?こだわり(ややこしい)中間色で紙バンドを作る事はお客さんにとっても楽しい事だと信じていたので外せなかったのです。

まぁお金があればどんどん紙を抄いて貰えばいいけれど、私にはお金が無いので、小さく紙を抄くしかなかったのです。でも色の数は増やしたい・・・・ここが苦しいところでしたね。
※残念ながら当時カラー原紙を抄いて貰っていた製紙会社はなくなってしまいました。

その後、紙バンド加工も自分で手配しなければならない状況になった時、静岡県以外で紙バンドを生産する会社は愛媛県のM社(四国中央市)しかない事を知り、さて困った・・・ルートが無かったのです。で、製紙会社の前に勤めていたT商事(四国中央市)の仲間に連絡し、間に入って貰ったのでした。もし、M社に断られていたら、始めたばかりの「兎屋」はやめる積りでいました。なので、「話だけでも聞きましょう」との返事をもらった時は、うれしい!と同時に緊張しました。


おかげさまで、M社から良い返事を頂き、今日まで長いお付き合いをさせて頂いています。当然M社さんとは一緒に何度も波を越えて来ました。M社にとっても手芸用紙バンドの製造は初めてだったのです。M社の社長をはじめ、M社の方たちは紙や紙加工に対する意識がとても高く、そのおかげで兎屋紙バンドが仕上がっているという事です。ありがたい事です。

兎屋紙バンドでは基本小ロットの色原紙を使います・・・・小ロット紙を使うという事は紙が安定していないという事です。大量発注出来るのなら抄きながら調整出来ますが、小ロットだと調整する前に抄き終わることもあるのです。色の調整も難しいという事です。

また、静岡県の紙バンド加工会社群とは違い、M社は米袋用紙バンド製造が主力なので、手芸用紙バンドは米袋用紙バンド製造が暇な時期しか作れないという規制もあり、品質向上のチャレンジが年に2回しか出来ないという事があったのです。

なので紙が悪いとか、紙バンド加工の調子が出なかった場合、それらの克服チャレンジは「次回持ちこみ」という事になるのでした。その挑戦を13年×2回=26回行い、兎屋紙バンドを育てて来ましたが、まだ納得が行かないところもあります。そして27回目の挑戦が来週から始まるタイミングで、四国中央市へ出張して来たという事です。